ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
さくら
2011/04/09
Sat. 01:59
桜を観に行く。
風が強い。ちゃんとした桜吹雪にはまだ早いので、花びらの落ち方も、落ちた花びらもあまりきれいではない。
曇った空がそれを助長している。

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の作品に、枯れてしまった桜を自分の命と引き換えに蘇らせる「十六桜」という話がある。
物語の中では、たくさんの花が咲く枝振りのよい桜として描かれていたように思うが、苔むす大幹にぽつんと咲く桜が「十六桜」にはふさわしい気がしてしまう。
老人の命をかけた願いは、大きくかたちづくられるよりも、収斂して密度の高いものとして表出するようなイメージが、個人的にどうしてもある。

夜は、昔々一緒に仕事をしていた仲間たちと久しぶりに会う。
思い出話の花は満開で、いい歳をした男たちが涙をにじませていた。
咲き誇る話は最後まで散る気配もなかった。
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