ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
花の数
2020/06/13
Sat. 05:44
席が空くのを待つあいだ、私たちは桜の横の椅子に座っていた。
この枝にいくつの花が咲いていると思う?と友人は言った。
古い日本家屋をそのまま利用した和風茶屋で、その軒先の鉢に、数本の見事な桜の枝が生けてあったのだ。
友人は小さく首を動かしながら花を数え始めた。
見たところ、小さい蕾もだいぶあったし、わずかにほころび始めたものから、それこそ全開のものまで、どこから咲いた花として数えたらいいのか私にはわからなかった。
通りの向こう側の、店先に桜の無い茶屋はすぐに座れるらしく、訪れる客はすぐに席に案内されていた。

黄色いTシャツを着た地元の子が、太いタイヤの自転車で前を過ぎて行った。タイヤが道から剥がれる音が心地よかった。
遠く小さくなっていくその子のTシャツの背中に何か見たことのあるキャラクターがプリントしてあった。
さあ、いくつでしょうか?と友人は私に聞いた。
私は、あのキャラクターなんだったっけ、と考えながら、51と言った。
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