ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
彩りをもたない月のあかり
2013/11/21
Thu. 23:11
調べた日没時間まではあと十分ほどしかなかったが、慌てずゆっくりと歩くことにした。
海に出ると、すでに太陽の姿はほとんど水平線にのみ込まれ、名残が空を彩っているだけだった。

ベンチに座って空が暗くなるまでずっと海を眺めていた。
ときおり覗くファインダーの中に、様々な影が現れては消え、消えては現れた。
楽しそうに語らう家族、仲睦まじい恋人や友人同士、ひとりで思索に耽る影。
すべての色が海に落ちると、かわって背後に控えていた明日の満月が空を照らしはじめた。
彩りをもたない月のあかりは煌々と青白く浮いたまま海の街をつつんでいた。

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