ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
卯の花月のころ(3)
2015/04/26
Sun. 05:12
席に着くと、シャンパンがすっと運ばれてきた。活きたアワビと半身に割った伊勢海老が鉄板にのせられる。
ワインを飲んでいた両親と乾杯をする。グラスを掲げただけで済ませようと思ったら、父がグラスを合わせろ合わせろチンしろチンしろと煩く言う。面倒くさい人だなと思いながら渋々したがった。

前日の従姉妹の結婚式の写真を父がカメラごと寄越す。行儀が悪くてすみませんという顔をしながら(女性2、男性1の給仕が席を囲んでいるのだ!)、前菜に箸を付けつつ、祝福に彩られた画像をスライドさせていく。
従姉妹と最後に会ってからずいぶん経つ。写真の中の彼女はやはり会っていない空白の年月分大人になっていて、僕と遺伝子が8分の1同じとは思えないほど立派に成長していた。
夫となったフランス人の男はすべてのカットで優しく微笑んでいた。現実の彼もきっときちんと優しいのだろう。こんなふうに僕も微笑むことができたらもっと違った人生になっていたのかもしれない。
二人はフランスのなんとかという町に住むらしい。彼女ならすべての面でうまくやっていけるだろう。なにせ僕とは遺伝子が8分の7も違うのだから。
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