ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
カゴの中の悲しきカナリア
2016/08/24
Wed. 03:12
エレベータの扉が開いたとき、乗っていたのは彼だけだった。
営業で外回りをしている風体のサラリーマン。
彼は、エレベータ待ちの僕たちの姿を認めると、表情を殺し、必要以上にうつむいてそそくさと降りる。
そして、僕たちの周囲にカルマン渦を残して早歩きで立ち去る。
いやな予感がした。
停滞していたカルマン渦が解け、うっすらと色をもったような緩い曲線となって拡散する。
やはりそうだ。
ケージの中にはある種のガスが立ち込めていた。
扉が閉まり、動き出す。
毒ガス検知のカナリアになった気分だった。

わりと遭遇する出来事ではある。被害者として。
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