ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
昔知ったあの人に似ていて
2018/08/21
Tue. 03:15
駅でおばあさんとすれ違った。
昔どこかで見た気がして心がざわざわした。
小さい頃、家の近くに駄菓子屋があった。
近くに住む小学生の憩いの場のような所だった。
竹串に三つくらいついた丸く平たいカステラのようなものとか、梅ジャムとか、麩菓子とか、ボンタンアメなどをよく買っていたように思う。
その駄菓子屋は、わりと人通りの多い道に面した古い平屋の日本家屋で、小さな痩せたおばあさんが一人で営んでいた。
おばあさんはいつも白髪混じりの髪を後ろで結わえ、和服に襷をかけ、着物にマッチした和スカーフのようなものを首に巻いていた。手拭いとかハンカチの類だったかもしれない。イメージとしては、映画「サマーウォーズ」に出てくる、あのおばあちゃんをひどくやつれさせたような感じだ。
普段は無口なおばあさんだった。
だが、ごくたまに世間に対しての小言のようなものを私たち児童に向かって延々と説くときがあって、その日に当たると、ああ今日はめんどくさい日だ、などと思いながらも、一人暮らしのおばあさんに対して憐憫の情のようなものがあったのだろうか、買った菓子や飴などを頬張ってずっと聞いていたのを思い出す。
その小言の多くは独り言であったが、児童たちの面子によってはグループディスカッションの場に様変わりすることもあった。
おまえたちはどう思う?などと振られると、弁舌巧みな児童は自分の意見を言い、またそれに対しておばあさんが何かしら答え、また児童たちが論を討つという、いまの世の中にはあまり見られない、世代を超えた貴重な町のコミュ二ティづくりに、そのあばあさんは一役買っていたのだった。

すれ違い、あのおばあさんだ、と思い出した直後、そんな記憶がよみがえった。
気になってストビューで見てみると、駄菓子屋のあったところは駐車場になっていた。すこし寂しい。
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