ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
「純子抄」
2019/04/12
Fri. 03:46
「じゅんこしょう」とその人は言った。
「じゅんこしょう?」と私は言った。
『智恵子抄』なら読んだことはあるが、『じゅんこ抄』は読んだことも聞いたことも無い。
純子か?順子か?淳子か?
「『じゅんこ抄』は読んだこと無いな」と私は言った。
その人は笑いながら私にくれた。
小さな瓶に入った生胡椒だった。

じゅんこはここには胡椒が無いといふ、
ほんとの胡椒が食べたいといふ。
私は驚いて調味料入れを見る。
塩やコンソメの間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみの粗挽き黒胡椒だ。
その横には挽き器もあって、
黒だけでなく桃色や白の乾燥した胡椒粒が並んでいる。
じゅんこは窓の外を見ながらいふ。
六本木のビルとか青山のビルとかに
入っているお店で売っている生胡椒こそが
じゅんこのほんとの胡椒だといふ。
あどけない生胡椒の話である。
Hommage a 「智恵子抄 (高村光太郎)」
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