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ASHINO KOICHI +plus

彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ

救急納豆 

2020/03/03
Tue. 05:40



冷蔵庫に、昨日が消費期限の納豆を見つけた。


大昔の仕事仲間に、U君という男がいた。

ある冬の日、わりと散らかし好きのU君は、部屋のこたつの上に消費期限の切れた納豆を見つける。
冬だし、寒いし、納豆なんてもともと腐ってるし、食べても大丈夫かなー、とU君はおもむろに食べ始める。
食べ終えて少し経つと、U君の体に異変が起こる。
指先が痺れている。
その痺れは徐々に全身に広がっていく。
これはまずい。救急車を呼ぼうとするが、手が痺れて動かない。
体が泥の中にあるかのように重く、全身が次第に丸まってくる。
視界も霞んでくる。
ああこれは死ぬかも。
いや、ここで死ぬわけにはいかない。
U君は最後の力を振り絞り、 顔で受話器を外し、咥えたペンの先で119を押す。
無事につながりはしたが、舌がまわらず、こんどは言葉をうまく発することができない。
うまく言えているのだろうか、受話器の向こうの声ももう認識できない。
全身はもうすでに胎児のように丸い。
うすれていく意識の中で、U君の耳に小さく救急車の音が届く。



IMGP1843.jpg



117を押してたらおもしろかったのに、と当時の笑い話。




 

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