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ASHINO KOICHI +plus

彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ

背中の毛 

2020/05/09
Sat. 01:23






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ある夏の暑い夜、久しぶりに会う小学校時代の友人と居酒屋に行った。

濃い色のくるぶし丈のジーンズを履いて、友人は待ち合わせ場所に現れた。

半ズボンをシンボリックアイテムとしていた友人は、真冬であろうと脚を隠すことはなかったので、会うたびにいつもちょっとした違和感を覚えた。

居酒屋ではヒグマの話になった。「羆嵐」と「シャトゥーン」という小説が面白かったという話の途中、トイレに立とうと腰をあげると、酔った足取りで他の客がトイレに入って行くのが見えた。

汗ばんだ薄い生地のTシャツを通してごわごわとした背中の毛がうっすらと見えた。

出るのを待って、トイレに入ると、手洗い場所の下に濡れたペーパータオルが落ちていた。

さっきの背中の毛がそのペーパータオルを養分にしてカイワレダイコンのように育っているところが頭に浮かんだ。

ああ、私はこれを拾うことはおろか触れることすらできないと思った。

用を足して戻ると、今度は友人が席を立った。

私は、背中の毛を見ていない友人があの濡れたペーパータオルを見て、どう思っているのか考えた。

戻ってきた友人は何も言わなかった。

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