Kさんのこと。＜前＞

もう10年以上も前にさかのぼります・・・。

Kさんは奇行で名を馳せたテニスプレーヤーでした。
試合前に入念なストレッチをすることを信条としていて、試合会場では、タオルの上で恍惚の表情を浮かべるKさんの姿が必ず見られました。
タフな試合になっても不調を来たさないようにすることはもちろん、気持ちを落ち着けるために必要な儀式だったのでしょう。

その日もその儀式を行うため、Kさんは手頃な場所を見つけ、愛用の大きなバスタオルを地面に敷いて横になりました。
テニスコートからすぐ近くの木漏れ日が落ちる道の上、寝転んだ前後は縦列駐車の車だけで、人通りもあまりありません。
鳥の鳴く声、近くの公園の子どもたちの遊ぶ声が心地よくKさんの耳に届きます。
ストレッチで副交感神経が刺激されたKさんは、いつのまにか寝入ってしまいました。





＜後＞に続く・・・。