ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
鰹節削り
2010/12/14
Tue. 00:04
小さいころ、食事どきに任される仕事があった。
鰹節を削る仕事だった。
鰹節削り器は、古い弦楽器のような艶と渋をまとっていて、
こども目で見ても、長い間大切に使われてきたことがわかる代物だった。
カタコト鳴る抽き出しを開けると、
大きな鰹節と小さくなった鰹節が入っていて、
その抽き出しをひくときの手応えで、
それぞれの鰹節のだいたいの大きさが判った。
畳の上できちんと正座をして削るように教えられた。
墨を摺るのに似ていたので、
自然に背筋は伸びて、気持ちも穏やかになっていった。
小さい方の鰹節は、削るとおがくずのような姿になった。
大きい方は、ちょっとしたコツさえ発見すれば、
どのような姿に変えることも可能だった。
鰹節には目があって、その目を見極めて刃にあてた。
なめらかな薄い膜のように削るのが好きで、
ちゃんと美しい姿に変わっているか、何度も何度も抽き出しを開けた。
そのうち、この料理にはこの姿の鰹節を、あの料理にはあの姿の鰹節を、
なんていう風に、付け合わせるものによって削り方を変えるまでになった。

すべての営みにはコツがあるということをこの頃に学んだような気がする。
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