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ASHINO KOICHI +plus

彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ

春の海の風 

2011/04/10
Sun. 05:28


窓を開けると、なまあたたかい風が部屋に入ってきた。
その風にはほんのすこし海のにおいがとけこんでいて、鼻先で行方を追った。

目の前が海という場所に友人が住んでいた。
僕はその友人の家で一年のうち三ヶ月くらいを過ごし、そこ特有の風で季節の変わり目を知るのがひとつの楽しみでもあった。
春先の朝、窓を開けると、とろっとした曇りガラスのような風が入ってきた。
春の変わり目のその風は、冬には無かったやさしくて怠惰な塩気を含んでいて、僕の顔の上をゆるゆると過ぎていったり、はりつくように留まったりした。

光る水面。庭の芝とか葉っぱとか。白い洗濯物。白いレースのカーテン。薄茶のフローリング。白木のテーブル。

鼻先で行方を追いながら、なんだかそんなことを思い出した。


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