ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
余地
2023/02/21
Tue. 06:12
過去の確定申告の書類や領収書は、廊下にあるクローゼットの最下段に保管しているのですが、ついでというか何というか、確定申告に入る前のこの時期に、そのクローゼットの最上段を整理することにしています。
ここには読了した本、あまり手にとらない美術本や画集、図録の類、過去に制作した小作品たち、もう必要ではないであろう書類の束などが詰まっています。
毎年整理しているにも関わらず、ああこんな本あったなあとページを捲ったりするので、それだけで半日くらい過ぎていってしまいます。

書類なんか捨ててもいいだろうと、今年はどっさり捨てたつもりですが、あまり見た目は変わらないものですね。
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様式としての魔物
2023/02/02
Thu. 03:56
高校生のころは、今のように個人で持てるような電話などなかった。
青春を謳歌している10代は、夜になると、ひっそりと彼女・彼氏の元へイエデンから電話をかけるのが様式だった。
そして、その様式の中に組み込まれるようにして魔物は存在した。

私もそんな様式に則っていた。
部屋に電話はあれど、回線は一つしかない。
電話が長くなったりすると、魔物はわざとかどうか知らんが、階段をダガ!ダガ!ダガ!ダガ!と音を立てて上ってくる。
やばい!来た!と受話器を持つ手に汗が滲む。
部屋の鍵がかかっているか確認する。大丈夫だ。
階段を上りきった。
もう、すぐそこにいる。
ドガ!ドガ!とノックが鳴る。
魔物が発する熱量がすごいのか、閉まっているドアが揺らめいて見える。
一瞬金縛りにかかるも正義の呪文を飛ばす。
「ベンキョーデワカンナイトコキイテンノスグオワルカラ!」
十字も切ったかもしれない。
すると魔物は何かよくわからない言葉を言って去っていく。魔界の言葉なのでよくわからないのだ。
退散させることはできたが、魔物が一度来るとテンションは否応なく下がる。
じゃあまた、と受話器を置く。
そしてテンションだだ下がりのまま、机に向かったりしたのだった。

魔物が二度三度と来襲することもあった。
もうそれくらいになると正義の呪文も効かない。
血を抜かれ、立てなくなった10代は、机に向かうこともできず、横になるしかないのだった。
魔物を逃れ、公衆電話を使用する者もいました。
でも、受ける側には魔物がいるわけで、いずれにせよ大変な時代でした。
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電話機回想譚
2023/01/28
Sat. 06:01
掃除機のデザインについて書いていて、思い出したことがあります。
高校時代、自分の部屋にあった、アイボリー色のプッシュボタン電話機がどうにも気に入らなくて、"Iskra" というメーカーの電話機を手に入れました。
いや、正確に書くと、プッシュボタンが気に入らなかったのではありませんね。"Iskra" に一目惚れし、どうしても欲しくなってしまったのでした。
あの頃は、ネットで探してポチっと、などということはできなくて、手に入れるまでが大変でした。
指差しジーコジーコダイヤルでしたが、とにかくデザインが良かった。
部屋に来た時は、小さい座布団の上に置いて、ずっと眺めてました。
目がキラキラうっとりしていたと思います。

一人暮らしをするようになって、留守番機能やFAXの付いた電話が必要となり、何度かの引越しの波に揉まれたりして、いつの間にか無くなってしまいました。
今でもあの "Iskra" は、記憶に鮮明に残っています。
高校生にはわりと高価で、身の程を弁えない買い物を親に内緒でしてしまったのでした。
すぐに鬼の追及がなされましたけれども。
スマホに頼るようになった今こそ、イエデンは "Iskra" でいいのではないだろうか、いっそのこと "Iskra" を手に入れてしまおうか、と一瞬思いましたが、ごく一部の年配者のためにFAXは手放せないのでした。
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1ヶ月遅れのクリスマス
2023/01/27
Fri. 02:21
11月8日にフランスへ送った作品が、1月25日にやっと購入者の手元に届けられた。
船便だった。
購入してくれた方から、追跡を見ても一向にアップデートされない。と何度も連絡があった。

11/9~1/20のあいだ、全然更新なし。心配になるのもむべなるかなである。
その度に私は、荷物は洋上にあるはずで、こちらにはどうすることもできない。と返答していた。
届かなかったらどうしよう、どうして船便なんかにしてしまったのかと、背中に汗をかきながら。
すでに入金されている方としては気が気でないはずだ。
立場が逆なら、私もたぶん同じことをしているだろう。
それがようやく到着したのだ。
フランス嬉しい。日本も嬉しい。よかったよかったと言い合った。
年末には届くだろうとの算段で、クリスマスメッセージを入れておいたのだが、1ヶ月遅れのクリスマスになってしまった。

関税って高いですよね。
50€だったそうです。
上記とまったく関係ないのですが、まったくほんとにとにかく引越ししたい。
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掃除機譚(後3)
2023/01/22
Sun. 06:17
掃除機が無ければ、掃除は捗らない。
これは多くの方にご同意いただける命題だと思います。
しかしながら、ほとんどの人がそうだと思うのですが、人生において掃除をしている時間よりも、していない時間の方が圧倒的に長い。
掃除機は、日常の営みで使用する道具の中でも群を抜く嵩張りを持つ物です(少なくとも私にとっては)。
そのわずかな時間というか便利さのために空間を損ねている。
デザインが、空間に溶け込むというか、存在を消すようなものであればいいのですが、機能上そうもいかない。
その掃除機が、今、2台、部屋にあるのです。
おそろしい光景です。
ずっとありそうで怖い。

置いているのは物置と化した洋室なので別にいいのですが、六畳和室でゴッホとゴーギャンが言い争いをしているくらい、目にうるさいです。
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